2日目の撮影が終わった。
本来ならば順調に進むべき撮影であったが、折からの炎天下、
長時間の撮影のために桑谷が体調の不良を訴えた。
スケジュールの凡そ半分を終えたところで撮影は打切りとなっていた。
その日の夕食、桑谷は皆の前に姿を表さなかった。
水「なっちゃん、大丈夫かな・・・」
水樹が労るように声を掛ける。
小「うん。なっちゃん、いつも頑張っているから、心配だよね」
小林が相槌を打ちながらそれに答えた。
望「・・・」
望月は向かいにある主のいない席をただ見つめていた。
桑谷は夕食を取らずに寝室を出ると砂浜に向かっていた。
そして砂浜から入り江の先にある岬へと歩いていった。
望「ごちそうさま・・・」
小「あれ?早いね」
水「もっちー、どうしたの?」
皆が食事中のなか、独り早めに望月が席を外した。
望「ううん。何でもないの・・・ごめんね・・・」
水「・・・いいのよ」
小「こっちは良いから。なっちゃんの傍にいてあげなよ」
望「うん。ありがとう」
水樹も小林もそれ以上の詮索はしなかった。
2人にとっても寧ろそれが当然のように思えていた。
小「なっちゃん、良くなってればいいよね」
水「そうだね・・・」
2人の視線が消えていく望月の後ろ姿を追っていた。
望月は夕食を終えると寝室にいるはずの桑谷を見舞おうとしていた。
桑谷を気遣い寝室のドアが静かに開けられた。
寝室内は明かりが消されており、暗く静かな空間が広がっていた。
望「なっちゃん、大丈夫・・・?」
望月が不安そうに声をかける。
望「なっちゃん、寝ているの?」
望月はベッドまで近づくと桑谷が居ないことに気付いた。
望「なっちゃん、何処に行っちゃったんだろう・・・」
望月は顔に不安の色を滲ませていた。
バルコニーに通じる窓のカーテンが風に揺れた。
窓は開け放たれており人のいる気配は感じ取られなかった。
しかし望月は桑谷が居るものと信じて疑わなかった。
望「なっちゃん、そこにいるの?」
望月は窓に近寄りカーテンを手繰り寄せた。
望「なっちゃん・・・」
それは桑谷が居ることを信じたいという望月の願望でしかなかった。
バルコニーに人が居ないことを確認すると望月は落胆の表情を隠さなかった。
(つづく)