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桑「お疲れさま、やっちゃん」
や「あ、お疲れさまでした・・・」

(どうしたらいんだろう、うまく言えないな)

プリッツの妹分オーディションからもうすぐ1年。あのとき選ばれた3人は不完全燃焼
のまま行き場のない立場に置かれていた。

「パピーズの伊藤靖子です!」
パピーズ、パピーズ、パピーズ・・・パピーズ・・・なにそれ?

私、いまなにをしてるんだろう。
「クリエイティブに生きていきたい」
少し他人と違う価値観であっても、私は私、他人は他人。そう思ってきた。
それなのに今の自分の立場、自分の評判ばかりが気になる。

「君の唇を逮捕する!」

・・・純粋に何かを演じることは楽しい。でもそれだけで生きていくには辛すぎる
世界に入ってしまったみたい。
パピーズの中の付き合い、そして桑谷さん、望月さんとの付き合い。私は少し窮屈だった。
窮屈なのは私だけ少し大柄だからかな?
決して大きくはない私がかわらしい4人のなかではやたらと大きく映ってしまう。
かわいく見られたい訳じゃない。
そう思うと余計に振る舞いがいつもぎこちなくなる。
イベントで精一杯にファンに向き合っている“ふたりのパピーズ”を見て、見習い
たいと思ってたけど、上手に自分を出せない。少し辛い。
私は色んな意味で自分に向き合えなくなっている。

・腹筋50回!
・ランニング5キロ!
・「東京特許許可局!東京特許許可局!!東京特許きょきゃ!?きょく・・・」

ラジオ収録の後、いつものようにひとりでトレーニング。声優学校にも行っていない
私にとってはフリーにできるすべての時間を特訓につぎ込む。
決して早いスタートではないから、いま持っている時間のすべてをこの世界での仕事の
ために使わなきゃ。

や「あなたのことが好きです!」
望「へっ!?」
や「あ、すいません!なんでもないです」

はっ、と我にかえってよかった。いつのまにかスタジオの控え室の中だった。

望「今日は早いね。まだ時間があるから一緒にシスプリファンディスクやろ!」
や「は、はい」

望月さん、かわいい声とはちがって凄く大人びてる。私はこの人を尊敬している。
この人を見ていると少し・・・どきどきしてくる。これが憧れなのかな。

望「ふぁ〜、少し眠くなっちゃった・・・やっちゃんのひざ、借りるね」
や「えっ、は、はい・・・(喜んで)」
望「えへへ、やっちゃんの太もも、気持ちいい」
や「そ、そうなんですかっ」

や、やだ。声がうわずってる。どきどきして、私どうしよう。「太ももが気持ちいい」
なんて言われたら恥ずかしい。まるまるとしてるから?ころころとしてるから?
もし今の真っ赤な顔見られたらどうしよう。

(靖子の妄想内)
望「あれぇ〜、やっちゃんのお顔真っ赤っか。どうしたのぉ?」
や「だ、だって・・・望月さんの寝顔がかわいいから」
望「えへへ。もっと近づいて見てもいいんだよ」
や「はい、こうですか?」
望「だ〜め、もっと。ちゅ〜ってしちゃうくらいに」
や「し、して下さい!」
(妄想終了)

そのときガチャッと控え室の扉が開くのが聞こえた。
びくっとして振り返ると、ぎょっとした形相で桑谷さんが私たちのこと睨んでいた。