桑「愛ちゃんのウエストって・・・結構くびれてるのね」
愛「げっ・・・」
私の横腹を桑谷さんの小さな手がさすっていく。こんなところを撫でられるなんて
初めての体験だった。
愛「・・・」
桑「うふふっ・・・」
動けないよ・・・だんだんと変な気持ちになってくる。そして、桑谷さんは私の
手を掴み、自らの腰元に当てさせた。
桑「ほら、私って寸胴でしょ」
愛「そ、そんなこと」
嘘。どこからが腰で、どこからがおしりなのか正直言って分からなかった。
桑「それじゃあ、お先に上がるね」
あっ・・・上がるときに見えた桑谷さんの全身。きれいだった。
ひとりになったお風呂の中。私は湯船の中で桑谷さんが触れた私のおなかの感触を
何度も反芻していた。そしてのぼせてしまった。
桑「大丈夫?」
愛「えっ」
気がつくと桑谷さんの膝枕の上にいた。
桑「全然出てこないから心配しちゃって」
はっと正気に戻ると自分がバスタオル一枚ですっぽんぽんなのに気づいた。
何も気づかずバスタオルを取ったとき、まじまじと自分の裸を見つめていた。
愛「ごめんなさい!!」
私は急いで着替えをすました。
やっちゃんからの次のメールが既にきていて、ただ一言、
『望月さんって、すごい・・・』
一体、なにやってるんだろう、あのふたりは。
桑「さ、寝ようか、、、っていうかお布団の中でゆっくり話そうか」
愛「は、はい(この先、何されるんだろう)」
桑「・・・触ったお返しはたっぷりするからね」
桑谷さんがくすっと笑いながらつぶやいた。
桑「・・・冗談よ」
あかりの消えた部屋で、ふたりは一緒の布団にいる。なぜか寝る前なのに桑谷さんは
ポニーテールだった。自然とふたりの手が“不自然に”触れ合う。
愛「桑谷さんとお別れなんて寂しいです」
私の偽ることのない告白。この世界を目指して厳しいオーディションを突破したのに
こんな唐突な終わり方だなんて、って思ってた。でも優しく接してくれた桑谷さんと
これで終わるなんて悲しすぎる。
桑「だめだよ。泣いたら。これからも同じ世界で会えるんだから」
愛「は、はい・・・わかってます。けど・・・」
桑「今度会う時は愛ちゃんが成功して有名になってるときかもね。出会いと別れは
これからもたくさんあるんだから気にしてちゃだめ。かなえばなんとかなるって
思っても、どんなに望んでも別れの時は・・・くるんだから」
愛「・・・」
でも、そんなことを言う桑谷さん自身の声が震えていたのをはっきりと覚えている。
だから、帰り際に言ってみたの。
愛「涙の訳を、いつか聞かせて下さい」って。
そしたら桑谷さんは、少し笑ってそっとうなずいてくれた。 (おしまい)