ちわ「あれ?景山さんからメールがきてる」
ちわ「珍しいな。仕事のお話は、いつもFAXでしてるのに」
ちわ「それに、なんか添付ファイルも付いてるな・・・」
斎藤は多少訝しく思ったが、マネージャーから送られてきたメールを開いてみた。
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おはよう、千和ちゃん。
事務所のメールアドレスに、桑谷さんから千和ちゃん宛の
メールが送られてきてましたので、転送します。
それでは。
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ちわ「なんだ、なっちゃんからのメールなのか」
ちわ「まったく、メアド教えてあげたのに、忘れちゃったのかな?」
ちわ「でも、いつもは携帯の方だけだから、しょうがないか。」
パソコンに向かって、ひとりごちながら、桑谷のメールを読み始める。
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やっほー、千和ちゃん元気?
前に話したことのある、東京ゲームショーのお仕事に行って
きたよ。今回は、由美子ちゃん、奈々ちゃんと一緒だったけ
ど、お客さんが本当たくさん来てくれて、嬉しかったけど、す
ごく緊張しちゃったよ。
そういえば、千和ちゃんも新しい企画、「みっくすJUICE」だ
っけ?が始まるんだよね。
お互い仕事とか色々あるけど、がんばろうね。
もちろん、千和ちゃんは勉強の方もね。(ふふふっ)
それでは。
あなたのお姉さま 夏子
P.S. お仕事のときの画像を送ります。
どうだ!あたくしってば、かわいいでしょ?
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「あー、ボイクルの頃話してた、ゲームショーのお仕事終わったのか」
「へぇ、なっちゃん、私の新しいお仕事覚えていてくれたんだ」
「なめんなぁー!学校のことを思い出したじゃないか、ひっどいよー!」
突然の大声に、たまたま廊下を通りかかった勇人君が、何事かと思い、そっとドアを開けて覗き込む。
そこには、内容に一々反応して、手足をばたつかせながら、画面に向かって語りかけている姉の姿。
「やれやれ・・・」と溜息を漏らしつつ、姉に気付かれぬようドアを閉め、彼は3階へ去っていった。
ちわ「そうだ、画像、画像」
ちわ「・・・!? あははははっ、何これー!」
そこには、ベビーピンクのパフスリーブワンピースに、白のカットソー長袖の重ね着、スウェードのブーツという、
桑谷の姿があった。しかも、ワンピースの裾はご丁寧にフリルで装飾されている。
確かにかわいらしい格好で、自信満々の桑谷の態度も頷ける。だがこの姿で、いつもの喋り方をするであろう
彼女を想像し、斎藤は笑いが止まらなかった。
ちわ「よーし、なっちゃんにお返し・・・、じゃない、返事書こう」
ちわ「さて、こんなものかな?じゃあ、なっちゃんの携帯に送るぞーっ!」
送信ボタンをクリックしたとき、楽しげに笑う桑谷の画像が、再び斎藤の目に映る。
(何でだろう、なっちゃんの画像を見ていると、とっても切なくなるよ。)
(この1年間が全て嘘みたいに思えてしまう。今まで毎週必ず会えたのに・・・)
(あれ、どうしよう。わたし、また泣きそうになってるよ・・・。)
(泣いちゃダメ、ダメだよ。これじゃあ、なっちゃんに本気でバカにされちゃうよ。)
斎藤は、泣きたい衝動を堪えるために、しばし時間を要した。
そしてそれが収まると、急ぎ、もう一つメールを書き上げ、桑谷に宛てて送るのであった。
くわ「ん?メール?」
くわ「えーと、あっ、千和ちゃんからだ!」
くわ「あたくしの艶姿を見て、感激していただけたかしら?」
なぜか、ご機嫌に斎藤のメールを読み始めるが・・・。
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なっちゃん、こんにちわちわ〜。
あはははっ!リピュアに合わせて、また猫被り始めたの?
でも、いつもの毒トークなんでしょ?それじゃあねぇ・・・。
あと、なっちゃんの服って、本当は、水樹さんの服じゃないの?
なっちゃん、無理言って、交換させたのでしょ?ひっどいなぁ。
なーんてね。
それでは、バイバイ。千和でした。
―――END―――
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「・・・、何これ?」
「このあたくしが、せっかく画像まで付けてメール送ってあげたのに」
「喜んでもらえると思ったのに・・・」
「なんだよ、この子。ちょー、むっかつくなぁー」
今まで機嫌が良かった分、感情のベクトルが同じ量だけ逆に振れたようだ。
そこへ、メールが送られてくる。タイトルがついてなかったが、斎藤からのものであった。
一瞬、桑谷はそのまま削除してやろうかしら?と思ったが、怒りを静めつつ、読み始めた。
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なっちゃん、さっきはあんなメール書いてごめんね。
なっちゃんの画像を見てたら、なんだかとっても寂しくなっ
てきちゃって、それをごまかそうとしたら、あんな風になっ
たんだ。
本当は、さっきも泣きそうだったけど、一生懸命ガマンし
たんだよ。だって泣いたら、またなっちゃんに笑われちゃ
うもんね。
それから、服とっても似合ってる。ブーツもきまってるね。
だからソバージュとその格好で、すごくフェミニンな感じが
して、なっちゃん、本当にとっても可愛よ。
あと、メールを送ってくれて本当にありがとう。わたし、こ
れからも一生懸命がんばるよ。
だから、これからもわたしのこと、見ててくれるよね。
千和より
P.S. でもね、真夜中に携帯へメールを送ってくるのは、
やめてほしいなー。
―――END―――
2通目のメールを読み終えると、彼女は静かに目を閉じて、優しく微笑んだ。
(まったく、千和ちゃんてば、子供なんだから・・・)
(それは、お互い様・・・なのかな?)
(でもね、千和ちゃん。泣ける時は、素直に泣いた方がいいのよ・・・。)
すぐさま、返信しようとして、ふと思い立ってそれをやめる。
くわ「明け方にでも、返事を書こうかな?」
悪戯っぽく笑って、彼女はそう呟くのであった。