Pritsのメンバーは、夏に発売されるアルバムの準備ため
海外ロケを行っていた。そんな或る日の朝の出来事。
青紫色をした天文薄明の空。りゅうこつ座のカノープスが微かに瞬く。
桑「・・・」
ガウンを纏った桑谷はバルコニーに佇み
珊瑚礁で三日月に形作られた海岸線を眺めている。
絶え間ない波の音だけが静かに辺りを包んでいた。
さーっと心地よい風が吹いた。
桑「・・・」
その風は桑谷の髪を揺らすと寝室へと流れていった。
バルコニーへと通じる寝室にはキングサイズのベッドが置かれ、望月が寝ていた。
望「・・・う・・・ん?」
風に擽られたのか望月がゆっくりと目を覚ます。
望「・・・あれ?なっ・・・ちゃん・・・?」
望月はまだ重い瞼を擦りながら桑谷を捜して声を掛けた。
桑「もっちー、おはよう。こっちよ」
望月の声に答えるように桑谷が振り返る。
望「あっ。なっちゃん、お外にいたんだね。おはよう」
桑谷を見つけて安堵した望月が笑みを漏らす。
望「ねえ、なっちゃん。どうしてお外にいるの?」
望月は室外にいる桑谷へと話しかける。
桑「・・・何となく・・・かな」
桑谷は視線を戻すとそう呟いた。
望「奈々ちゃんと由美子ちゃんは?」
桑「まだ隣の寝室で寝てると思うわ」
望「ふーん、そうなんだ・・・」
日中は太陽の光で青く輝く海も夜明け前には深い色をみせる。
白い砂浜だけが淡く消えてゆく波を映し出していた。
桑「昨日は移動とかあったし、みんな疲れているんでしょ。休ませてあげましょう」
望「・・・うん・・・」
波打ち際を凝視する桑谷。
望月は桑谷の視線の先を追っていた。
望「ねえ、なっちゃん・・・」
桑「うん・・・?」
心が此処に無いかのように虚ろに答える桑谷。
望「何を見ていたの・・・?」
桑谷の態度に望月が訝しげに尋ねた。
桑「えっ?あたし・・・?」
桑谷が望月の方へとゆっくり振り向く。
桑「あたしは・・・海・・・かな・・・」
望「う・・・み・・・」
桑「そう・・・」
桑谷はそう言うと碧い沖を見遣った。
時折、砂浜を弱い風が吹き抜けていった。
椰子の木々が揺られ、葉がカサカサと音を立てていた。
望「どうして・・・海を見ているの?」
ベッドから上半身を起こした望月が肩越しに桑谷へ尋ねる。
桑「どうして・・・なのかな・・・」
望「なっちゃん・・・」
木々を揺らしていた風が桑谷と望月の間を流れた。
桑谷と望月の髪が戦いでいた。
青紫色をした空が東から徐々に白んでいった。
ふっ、と桑谷が口元に笑みを漏らす。
桑谷を背後から見ていた望月にも桑谷の笑みが見て取れた。
望「なっちゃん?」
桑「・・・冷ましてたの・・・」
桑谷が静かに語る。
桑「冷ましていたの・・・躰の火照りを・・・」
望「・・・えっ?なっちゃん、今なんて・・・」
望月が聞き返す。
桑谷は躰を望月の方に向け、言葉を繰り返した。
桑「躰が火照っていたから風に当たって冷ましていたの」
望「なっちゃん・・・それって・・・」
望月が今にも消え入りそうな声で話す。
桑「昨日、色いろあったでしょ?」
望「い、色いろって?」
昨夜の情事を思い出していた望月。
そして緊張のあまり顔が赤らんでゆくのを感じていた。
桑「移動とか撮影とかあったでしょ?」
望「さ、撮影・・・あっ、そうだよね。うん。炎天下での撮影だったもんね」
桑「くすっ。それとも、もっちーにはまだ他にあるのかしら?」
桑谷は小悪魔のような笑みを浮かべる。
望「え?ええっ?」
桑「昨日の夜の・・・事とか・・・」
望「なっちゃん・・・そんな事・・・」
少し強めの風が室内に吹き込んだ。
寝室の窓に附けられていた白いレースのカーテンが静かに揺れていた。
天文薄明が終わるに頃、空は青紫色から赤紫の朝焼けへと変わる。
南の島の短い夏の夜が明けようとしていた。
望「なっちゃん・・・」
桑「・・・なあに?」
望「き、昨日の事だけど・・・」
桑「・・・」
桑谷は望月の言う事が聞こえなかったかの様にバルコニーの手摺りへと近寄った。
望「聞こえちゃったかな・・・?」
桑「なにが?」
桑谷は望月に背を向け水平線を見ながら会話を続けた。
望「わ、わたしの・・・声・・・」
桑「誰に?」
望「誰って・・・な、奈々ちゃんと由美子ちゃんに・・・」
桑「どうして?」
望「だって・・・わたし・・・その・・・」
桑「興奮しっちゃったから?」
桑谷は望月の羞恥心を煽るように大きな声で言葉を繋いだ。
望「こっ、こうふ・・・な、なっちゃん、は、恥ずかしいよ・・・」
望月はさっきよりも一段と小さな声で応えた。
桑「そうね。もっちーの声、2人に聞こえちゃったかもね」
桑谷は望月の反応を愉しむかのようにしていた。
望「どうしよう・・・」
桑「どうしたの?」
望「だって・・・今日もみんなと撮影だよ。わたし・・・顔合わせられないよ」
桑「恥ずかしいから?」
望「・・・うん」
桑「ふーん・・・恥ずかしいほどもっちー大きな声だったんだ・・・」
望「そ、そんな・・・」
細い弧を描いた若い月が朝焼けのなかを静かに昇っていた。
羞恥の極みに達した望月は俯いたまま言葉を失っていた。
桑「ふふっ、冗談が過ぎたようね」
望「・・・」
うっすらと涙を浮かべた瞳で桑谷を見上げる望月。
桑「ごめんね、もっちー」
望「なっちゃん・・・・」
桑「大丈夫よ。聞こえてないって」
望「・・・う・・・ん」
桑「さて・・・と」
桑谷が寝室に向かって歩き出す。
望「・・・」
桑谷の行動を見守る望月。
桑「ねえ、もっちー」
望「なあに?」
桑「散歩に行こうか?」
望「お散歩?」
桑「そう。ホテルから見える砂浜あるでしょ。あそこ」
望「今から?」
桑「日中でも良いけど、暑いでしょ。撮影もあるし。」
望「そうだね」
桑「それに観光客も多く来そうだもん」
望「わたしも一緒で良いの?」
桑「馬鹿ねー、一緒に行きたいから誘ってるんでしょ」
望「あ、そうだよね。へへへっ」
桑「でも、流石にこの格好じゃ外にでられないわね」
望「なっちゃん、ガウンの下・・・」
桑「あたし?着けてないわよ。昨日の夜のままよ」
望「・・・」
望月はガウンに隠された桑谷の姿を想像して顔を赤らめた。
桑谷は海岸の見えるバルコニーから寝室に入ってきた。
桑「恥ずかしがらないで。もっちーだって一緒でしょ?」
望「え・・・きゃっ」
望月は自分が生まれたままの姿であることを認識するとベッドのなかに潜り込もうとした。
桑「もっちー、昨日そのまま寝ちゃうんだもん」
望「そ、そうだっけ・・・」
桑「うん。気持ち良さそうに寝てた」
望「そう・・・なの・・・?」
桑「そうよ。可愛かったわ」
望「・・・」
桑「さてと・・・」
望「あ、なっちゃん、何処に行くの?」
桑「バスルーム。シャワー浴びようと思うの」
望「今から?」
桑「そうよ」
望「朝食は?」
桑「朝食はまだでしょ。奈々ちゃんや由美子ちゃん寝てるんだし」
桑谷が寝室にあるテーブルの上に置かれた時計を見る。
望月もそれにつられるように時計を見遣る。
桑「それにね」
望「それに?」
桑「散策してみようかなって思って」
望「さんさ・・・く?」
桑「昨日も撮影とかでこの辺見てないでしょ」
望「うん」
桑「あたし、今朝ずっと砂浜とか見ていて綺麗だなって思ったの」
望「そうなんだ」
桑「うん。朝早いうちなら風も気持ち良いしね」
望「あ、そうだよね」
桑「昼間なんて暑くて無理よ」
望「撮影もあるしね」
桑「そうね。ねえ、もっちーも一緒に行く?」
望「うん。行くいく」
桑「でも・・・流石に、その格好じゃ無理よね」
望「そうだよ」
桑「あたしは別に構わないけど」
望「わたしが嫌だよ」
桑「あははは、確かにそうよね」
望「うん・・・」
桑「それなら、もっちーも一緒にシャワー浴びてから着替える?」
望「えっ?わ、わたしは・・・別に・・・」
桑「恥ずかしいから止めておく?」
桑谷が笑いながら話す。
望「う・・・うん・・・」
桑「そう、それならあたしが先に入るね」
望「分かった」
桑「一緒に入りたくなったら来ても良いからね」
望「え・・・」
桑「冗談よ」
望「もう・・・」
笑い声を残すと桑谷はベッドの脇を通りバスルームへと向かった。
バスルームから水の流れる音が漏れてくる。
望月はシャワーの音を聞くと桑谷の残り香を確かめるかのように
ベッドのなかでうつ伏せになり顔を枕に押し当て、深く息を吸った。
昨夜の出来事の余韻に浸るように静かにそして深く息を吸った。
やがてシャワーを浴びた桑谷がバスロブを纏いベッドルームに戻ってきた。
望月は桑谷の姿を見るとベッドから白いシーツを引き抜き躰に巻き付けた。
桑「あら?もっちー、寝ていたの?」
望「え?ううん。そんなこと無いんだけど」
桑「うつ伏せになってたでしょ。寝ていたんじゃないの?」
望「違うって」
桑「そう・・・それよりもっちー、1つ聞いて良い?」
望「なあに?」
桑「シャワーを浴びるんでしょ。何でシーツを巻くの?」
望「だって・・・」
桑「やっぱり恥ずかしいから?」
望「それもあるんだけど・・・」
桑「他にも?」
望「うん。あのね、よく映画とかであるでしょ?」
桑「ああ、そういえば女の人が裸でシーツ巻いてるわね」
望「ちょっと憧れちゃって・・・」
桑「可愛いわね、もっちーたら」
望「えへへっ」
桑「それより、早く入ってきたら?」
望「あ、そうだよね」
桑「置いてっちゃうわよ」
望「そんなのやだよ。待っててね」
躰にシーツを巻いた望月の姿がバスルームへと消えた。
桑谷は望月の後ろ姿をずっと眺めていた。
桑谷はバスルームから聞こえるシャワーの音を背にすると、
寝室の一角にあるクローゼットへと向かった。
そして桑谷はホワイトでストラップに小花をあしらったレースのブラジャーと
同系色のはきこみの浅いショーツを身に付けた。
程なくしてシャワーの音が止んだ。
バスローブを纏った望月が少し上気した顔でバスルームから出てきた。
そのまま望月は桑谷に近づくと声を掛けた。
望「あ、なっちゃん。大人っぽい下着だね」
桑「そう?ありがとう。でもね、ここ。肩口にアクセントがあるのよ」
望「本当だ。ここにもレースがあるんだね。可愛いよね」
桑「そうね。でも、もっちー、着替えたら?風邪ひいちゃうわよ」
望「うん、そうだね」
桑「もっちーはどんな下着にするの?」
望「え、わたし?えへへっ、色はなっちゃんに近いかな」
桑「ホワイトなの?」
望「アイボリーなんだけどね。ブラが胸に自然な丸みを出してくれるんだって」
桑「へえー、おもしろーい。ねえ、もっちー、早く着けてみてよ」
望「えっとぉ、ちょっと待っててね」
桑「あれ、それなの?いやーん、もっちー、可愛いっ」
望「そうだよ。今から着けるね。あ、でも、なっちゃん・・・」
桑「なに?」
望「後ろ・・・向いてくれないかな・・・」
桑「どうして?」
望「どうしてって・・・」
桑「女の子同士じゃん、気にしないで」
望「なっちゃんは気にならなくても・・・」
桑「はいはい。うぶね、もっちーたら。これでいい?」
望「あ、うん。すぐだから、ごめんね」
桑「いいわよ」
望月のインナーはアイボリーでフロントレースタイプのショーツと透明感のある
やさしい表情のレースをしたブラジャーでコーディネイトされていた。
望「なっちゃん、おまたせ」
桑「もういいの?あ、ホント、すっごく可愛いね」
望「ありがとう」
桑「ショーツのフロントレースも凄い大人っぽいよ」
望「あははっ、じっと見られちゃうと照れちゃうね」
桑「うん。もっちー、いいよ。すっごくいい」
望「えへっ。でも、なっちゃん、上は何を着ていくの?」
桑「ああ、服のこと?これを着ようかなって思ってるの」
望「これって・・・今日の撮影用のサマードレスだよね?」
桑「そうよ。だから下着だって白でしょ?」
望「そうだけど、怒られないのかな」
桑「大丈夫よ。どうせ後数時間もすれば嫌でも着るんだから」
望「それとはちょっと問題が違うと思うんだけど」
桑「違わないって。それに、もっちーにあたしのドレス姿一番に見て欲しいもん」
望「わたしに?」
桑「もっちーだって見たいでしょ?」
望「見たいよ」
桑「あたしだってもっちーのドレス姿一番に見たいもん」
望「そうだよね。うん、分かった」
桑「そうと決まれば早く着替えましょ」
望「うん」
2人は今日の撮影に用いるべきだった洋服をの衣装を身に纏うと
部屋を飛び出し、バルコニーから見えた海岸線へと走り寄った。
桑「もうすぐ夜明けね」
望「わぁ、綺麗・・・」
東の空は黄金(きん)色に輝き今にも朝日が昇りそうだった。
桑
「風、上にいるより気持ち良い・・・」
望「そうだね・・・」
桑谷と望月は砂浜に腰を下ろすと太陽の昇る方向を眺めていた。
桑谷は自分の左手を見遣ると可笑しそうに望月に話しかけた。
桑「ねえ、もっちー」
望「なあに?」
桑「あたし達、どうして手を繋いで海を見てるのかなぁ?」
望「えっ・・・」
望月は驚いて自分の右手を見た。
望「あれ?本当だ。いつの間になっちゃんと手を結んでんだろう?」
桑「もっちーも意識無かったの?」
望「なっちゃんも?」
桑「うん」
望「可笑しいね」
桑「そうね」
桑谷と望月はそう言うと自分たちの繋がれた手を見た。
望「でもね・・・」
桑「なに?」
望「わたし、手を繋ぐのって、嫌じゃないよ」
桑「うん、あたしも・・・」
望「・・・」
桑「・・・」
望「ねえ、なっちゃん・・・」
桑「・・・うん・・・」
望「何かお話して・・・」
桑「・・・そうね」
望「・・・」
桑「・・・」
2人の間を静寂が流れる。
岸に打ち寄せる波の音が聞こえていた。
やがて沈黙を破るように望月が桑谷に話しかけた。
望「なっちゃん・・・」
桑「・・・うん」
望「どうして、お話ししてくれないの?」
桑「・・・」
望「ねえ、なっちゃん・・・」
望月は桑谷の顔をのぞき込んだ。
桑谷は見つめていた海から視線を望月に移すと優しげに話し始めた。
桑「あのね・・・」
望「うん・・・」
桑「あたしね・・・」
望「・・・」
桑「このままでいたいの・・・」
望「・・・」
桑「言葉にするとね・・・」
望「・・・」
桑「全てが嘘に思えてしまいそうなの・・・」
望「・・・」
桑「あたしの気持ちを言葉に置き換えるなんて・・・」
望「・・・」
桑「全ての気持ちを言葉にするなんて出来ないの・・・」
望「・・・」
桑「ねえ、もっちー・・・」
望「・・・なあに?」
桑「あたし達、手を繋いでいるよね・・・」
望「うん・・・そうだよ・・・」
桑「温かいよね・・・」
望「そうだね・・・」
桑「でも、温かいのは手だけじゃないよね・・・」
望「・・・」
桑「何だろう・・・胸の奥も温かいよね・・・」
望「なっちゃん・・・」
桑「もしかしたら、それだけのことなのかもしれないの・・・・」
望「・・・」
桑「もっちーとこうして手を繋いでいられるだけで幸せ・・・」
望「・・・」
桑「そう言えば良いことだけなのかもしれないの・・・」
望「・・・」
桑「だけどね・・・それだけじゃないの・・・」
望「・・・」
桑「それだけでは言い表せないの・・・」
望「分かるよ、なっちゃん・・・」
桑「だから、もっちー・・・」
望「うん・・・」
桑「このままじゃ・・・駄目かな?」
望「ううん、わたしも一緒だから・・・」
桑「そう。ありがとう、ごめんね・・・」
望「そんな・・・わたしこそ、嬉しいから・・・」
それからまたどれくらいの時間が経ったのだろうか。
2人は何も語らすに海を見ていた。
夜明けが近いことを知らせる鳥たちの囀りを聞きながら。
やがて、2人に聞き覚えのある声がした。
桑谷と望月のいたホテルのバルコニーから水樹と小林の声が聞こえてきた。
水「あれ?なっちゃんともっちー、何処行っちゃったんだろう?」
小「おかしいよね。もうすぐ朝食なのにさ」
桑谷と望月は2人の声がするバルコニーを見上げた。
桑「奈々ちゃん達、あたし達のこと探しているみたいね」
望「そうみたいだね。そろそろ戻ろうか?」
水樹は砂浜を見下ろすと桑谷と望月が並んで立っているのを見つけた。
水「あ、いたいた。由美子ちゃん、なっちゃん達、砂浜にいたよ」
小林は水樹に並ぶと桑谷と望月に声を掛けた。
小「ああ、本当だ。おーい、2人とも何やってんのー?」
桑「奈々ちゃん、由美子ちゃん、おはよう」
望「あ、おはよう。あのね、なっちゃんとお散歩してたんだよ」
桑谷と望月は笑って手を振った。
水樹と小林もつられて笑うと手を振り返した。
水「なっちゃん、それ、今日の衣装でしょ?」
桑「あれ、ばれちゃった?拙いかな?」
水「大丈夫。似合ってるよ」
桑「ありがとう」
水「もっちーも可愛いわよ」
望「えへへっ、ありがとう」
小「それより2人とも、朝食を兼ねて今日の撮影のミーティングするから集まれってさ」
水「そうだったわね。私達、先に行ってるね」
桑「分かったわ」
小「向こうで待ってるよ」
望「うん、すぐに行くね」
桑「じゃあ、行こうか、もっちー」
望「うん。あっ・・・」
桑谷に促されてホテルに戻ろうとする望月が歩みを止めた。
桑「・・・どうしたの?」
望月の手を引っ張るように歩いていた桑谷もその歩みを止めた。
望「なっちゃん、あれ・・・」
桑「日の出ね・・・」
望「綺麗・・・」
珊瑚礁で形作られた三日月をした入り江の先、
水平線の彼方から朝日が登り始めていた。
2人は何も語らなかった。
ただ眩しそうに目を細めて朝日を見つめていた。
まだ弱い朝の日の光が2人を照らしていた。
白い砂浜に2人の影が長く伸びていた。
絶え間ない静かな波の音だけが変わらずに2人を包んでいた。
(おしまい)