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今夜の番組チェック

 

 

深深と、身体に沁み渡る悪寒。
雨の日の私はひたすら憂鬱で、ずぶ濡れの野良猫のように、不安な気持ちに包まれる。
どうしても、気分が晴れない。自信が持てない。
私の心が降りしきる雨の中にはぐれたのは、もしかしたら自分でも気付かないくらい、
ずっと、ずうっと前からだったのかな…?

「占い、どうなったぁ?今年はいいんでしょ?」
ラジオ収録中のもっちーの一言に、不意にイヤな記憶が蘇ってきた。
今年のしし座の恋愛運は◎だなんて、占いではそう出ていたっけ。
残り半年に追い詰められて、ひしひしと『ぬか喜び』を予感する。
「なんかねぇ。不安も多々ありって感じ、なんですけどねぇ」
暗く沈む気持ちを冗談で隠して、そっけなく相槌を打ってみせた。
『私は本気で占いに一喜一憂する、子供じみた女です』って言ってやったなら…
目の前のこの子は、呆気にとられるだろうか。
「結婚だなんて…あたしじゃ駄目なの?」だなんて、狼狽えでもするのだろうか。

私はもっちーが好き。もっちーが好き。大好き。

それは紛れもなく、男女がひかれあう感情にとても近いところにあると思う。
でも、やっぱり結婚というイベントに憧れは感じるし、何て言うか、頼れる誰かに寄り添いたいとも思う。
(こんなにも、もっちーのことが好きなのに?)
支離滅裂で、欲しがり屋。今更ながら思い知らされる。強欲で、浅ましい女。

…やまない雨に、溺れてしまいそう。

「うふふふ…ちょっとさびしいかもぉ」
…それにしてもこの子ときたら、なんて馬鹿みたいに笑うんだろう。
(私がこんなにいろいろ思い悩んでいたとしても、もっちーはそうやって笑ってられるんだよね)

ほんの…ほんのちょっぴり、返す言葉に『毒』を込めてみる。
乗せた思いのぶんだけ、自分の胸がずきんと痛んだ。
これが私。毒舌だとか、いい加減な態度だとか多くの人は言うけれど、ずっと虚勢を張っていなければ
本当に弱い私は、何ひとつ出来やしないから。
「…なっちゃん?」
…最低。
「私、根暗な子なんで」
「…っ!?」
もっちーの笑顔が不自然に引き攣った。そうだよね。長い付き合いだものね。
「い、いっつも元気じゃない!?」

もっちー…丸っきり気付いてないわけじゃ、なかったんだ。

こうやって自分をさらけ出して、傷つかずにはいられない桑谷夏子という人間を…
そんな醜い私を励まそうとして、笑って、ただ笑って…。
「どっからそのパワーがでるかって、いっつもいっつも不思議だったんだ、けど…」
語尾に勢いがなくなってくる。フォローしきれないのが、ほんとにもっちーらしい。
「…ちょっと…ショック受けた」
力なく俯く、かわいそうなもっちー。
私は、たまらなくもっちーがかわいそうになった。
かたかたと、知らないうちに机に置いた手が震え出す。ああ、

どこかが、こわれ、そう。

「また、ひとつこれでバレたってことでー!」
結局、私は強がりを押し通すことしかできなかった。
大好きなもっちー。でもね、もっちーに弱みを見せるなんてまっぴらご免。
私と対等、もしかしたらもっちーの方が私を低く見るようなことになるなんて、
想像しただけでも怖気がはしる。
私の、薄っぺらなプライドに誓って。いや、もしかしたら何よりも怖かったのは…

(私ともっちーの関係が、変わってしまうこと?)

自分を動かしているものが誇りなのか弱さなのか、頭の中がぐちゃぐちゃになる。

その日、私はもっちーの顔をまともに見られないまま、帰路についた。
早く、早く雨が上がればいい。そう願いながら…。